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赤虎アイルー

某所で書き溜めたSSの保管庫

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47:二人の父親

正しい言葉を覚えさせる為に、ククルが学校に行くようです。
まぁどうぞ。



「ククル君を学校に、ですか?」
「うん・・・このままだと変な言葉ばっかり覚えそうで・・・そうなる前にちゃんとした授業でちゃんとした言葉を教えて欲しいんだ。」
ユーリさんが珍しく、私に頼みたいことがあると、真面目な顔で語るので何事かと思ったけど・・・。
ユーリさんに抱っこされたククル君の方を見ると、きょとんとした表情でこちらを見返すだけで、恐らく会話の内容がまだ理解できていないのだろう。
「私としては構いませんけど・・・う~ん・・・問題は他の子ですね・・・。」
教え子が増えるのは、むしろ歓迎したい。
だけどククル君の特殊な体質を考えると、手放しでは喜べないのが現状だ。
何かの拍子でモンスターの形態に戻って大騒ぎになるかもしれないし、最悪の場合それで誰かが怪我する恐れもある。
親御さん達からお子さんを預かっている身としては、それだけは避けないといけない。
「あー・・・やっぱそっか・・・。」
ユーリさんは少し落胆した様子で、だけども迷いの無い調子で言う。
「でも、ここで生活していく以上はそれは避けて通れない道だし、ちょっとづつでも人に慣れさせようと思って・・・同年代の子と触れ合えば、その辺の力加減も覚えられるかもしれないし・・・。」
「・・・」
「うん? キーツさん?」
「あ、いえ・・・すいません。何だかとても感心してしまって・・・。」
きちんとそこまで考えて、ククル君を学校に行かせたいって考えたのか・・・。
なんというか・・・
「・・・ユーリさん、すごく、お父さんらしいですね。」
「・・・はい!?」
「ちゃんとククル君のことを考えて、難しい道でも為になるからって、甘やかさずにその道を選択して・・・私なんてまだあー君なんて子供の時の呼び方のままで・・・今は私が旦那様の代わりにあー君を見守らないといけないのに・・・。」
本当に・・・こんなに年下のユーリさんの方がしっかりしてるなんて・・・自分が情けない・・・。
「あ、あの! そんなこと無いですから! キーツさんの方がずっと立派ですから! アーヴィンとここまで付き合えるなんて真似、キーツさんにしか出来ませんから!」
「・・・でも・・・」
「それに! 今だって村の皆の為に学校開いてるし! 俺にはそんなこと出来ませんよホント!」
「先生になったのは村長さんに勧められてですし、私自身の力では・・・」
あぁ・・・またユーリさんにこんなに気を遣わせて・・・
本当に・・・情けない・・・
「っだぁ! うっぜぇっての!」
「あたっ!?」
いきなり後頭部を本で叩かれ、思わずそこを押さえる。
「いたた・・・何するのあー君・・・。」
「うっせぇヘタレウス! 頼み事にきた客人を逆に困らせてどうする!」
あ・・・そういえば・・・
「す、すいませんユーリさん!」
「い、いや別にいいですから・・・つかアーヴィン・・・」
「何だよ! キーツはこうなると長いから止めてやったのによ! それより、どうするんだ?」
「え?」
「だぁかぁらぁ! そいつのことだよ! 学校に出すのか出さねぇのか!?」
「そりゃ、出せるなら出したいけど・・・。」
「なら来い。俺が許す。」
「ちょ、あー君!」
「あぁ? 何だよ? 当分はユーリかトトルが一緒なら大丈夫だろ? とりあえずは一回やってみて様子見ればいいじゃねぇか。」
「そ、それはそうかもしれないけど・・・」
「なら決まりだな。次の授業は明日だからな。忘れずに来いよ!」
言いたいことだけ言って、あー君は部屋の奥へ行ってしまった。
後には呆然としている私とユーリさん、そしてやっぱり状況が分かってないククル君だけが残された。
「ご、ごめんなさい・・・あー君いつもあんな感じで・・・。」
「いや・・・でもそうだな・・・うん。明日一度顔を出してみます。それで大丈夫かどうかは、キーツさんが判断して下さい。」
「えぇ!? でも、あの」
「何かあったらトトルと俺がすぐにどうにかしますから、ね?」
そう言われてしまうと、何も言い返せなくて。
そして結局・・・



「ほれ先生が来たぞガキどもー! さっさと座れー!」
「げー! なんだよあー君の癖にえらそーに!」 
「こないだすーさんにはあー坊って言われてたじゃんか!」
「うっせぇっつてんだろ! ほらキーツも何とか言ってやれ!」
「あはは・・・」
本当に、いつも通りの調子で授業が始まり、いつも通りのやり取りが繰り返される。
けど、今回はちょっと違うこともあるのだ。
「えーと、今日から新しい生徒として、ククル君がやってきました。当分の間はユーリさんとトトルさんも一緒ですけど、皆さん仲良くしてあげてくださいね。」
「・・・よろしく。」
「・・・トトル、それじゃ簡潔すぎだ・・・。えっと、ククルは皆とはちょっと違うとこもあるけど、まぁ素直な子なんでよくしてやってください。ほら、ククル。」
「・・・にー・・・。」
まだこんなに多くの人の前に出たことが無いのか、ククル君はユーリさんの後ろに隠れ、顔だけを覗かせている。
「わーすごーい! 耳と尻尾があるー!」
「よろしくねー! あ、私リーナって言うの!」
「にー・・・りーな?」
「俺はライな! ライ!」
「らい?」
「あ、僕はね! 僕は・・・」
「はーい皆それくらいにしてあげて。一度に言われてもククル君覚えきれないから。」
『はーい!』
そこからはまた、いつも通り本を読んだり、遊んだり、歌を歌ったり。
ククル君もすぐ馴染んでしまったようで、子供たちと混ざって遊び回っている。
子供同士では言葉は不要とは言うけれど、ここまでとは・・・。
「な? 大丈夫だったろ?」
「あ、あー君」
何時の間にか横に座っていたあー君が、自信満々の笑顔で言う。
「ここのガキは物怖じしねぇからな。尻尾があろうが何だろうが、すぐに仲良くなっちまうよ。キーツの事だって、すぐに『せんせー』って呼ぶようになったろ?」
「あ・・・。」
「あーくーん! ククルが木登りして下りられなくなったー!」
「あぁ!? 今行くー!」
すぐさま駆け出したあー君の背中を、じっと見詰める。
何時の間にか、すっかり大きくなってたんだなぁ・・・。
「・・・やっぱ、俺はキーツさんには敵わない気がするなぁ。」
「ユーリさん・・・?」
今度は、ユーリさんが横に来ていた。
「あの捻くれ者をここまで育てたんですからね。」
「・・・あー君は・・・確かに素直じゃないとこもありますけど、でも、いい子ですよ。」
「・・・そう言い切れるだけで、もう充分お父さんですよ。キーツさんも。」
「・・・そうでしょうか?」
「えぇ。とても。」
これもまた自信満々の笑顔で言われてしまって、何も言い返せない。
・・・親馬鹿なのかなぁ・・・やっぱり・・・。
「うおっと!? ったく、ナルガクルガの癖に木から下りられないってどうなんだよ・・・ってぇ!?」
「ぎーっ! あーくん、きらい!」
「あぁ、んだとぉ!?」
「あっ、こら! ククル! 助けてもらったのに引っ掻いたりしたらダメだろ!」
「ユーリ! たすけて!」
「っこのやろ! ユーリの後ろに逃げんな!」
・・・でもやっぱりまだまだあー君は子供だから、色々心配だなぁ・・・。


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