赤虎アイルー

某所で書き溜めたSSの保管庫

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3-3:影を絶つ(後編)

お待たせしました後編です。




虚から身を乗り出した時には、既に数人が周囲に倒れていた。
ナルガクルガは樹上から樹上へと飛び回り、地上でうろたえている密猟者達の隙を見ては、急降下して一撃で仕留める。
「くそっ! 何なんだあいつは!?」
「速すぎて狙えねぇ!」
密猟者達は全員ライトボウガンを構えているが、動きに付いていけず悉く狙いを外している。
「全員散弾に切り替えろ! 多少ずれてもこれなら当たる!」
リーダー格らしき人物の号令に、やつらはすぐさま弾を装填した。
いくらナルガクルガとはいえ、今の人の姿ではそんなもの避けられないし、当たればタダではすまない。
・・・やっぱりここは俺が行くしかないか。
俺は弓を構え、大声を張り上げる。
「全員武器を捨てて両手を挙げろ!」
「ちっ! ハンターだと!?」
「おいどうする!?」
「落ち着け! 相手はぐあっ!?」
俺の方に注意が向いた一瞬を逃さず、ナルガクルガは密猟者の一人を切り伏せる。
まずい。これはまずい。
「とっ、投降すれば助かるんじゃねぇのか!?」
「こいつら俺たちを皆殺しにする気だ!」
「畜生!」
俺の予想通り、パニック状態に陥った密猟者達は出鱈目に散弾を撃ち始めた。
手練の密猟者とは言え、所詮はマトモな武器の扱いも知らない連中だ。
そんな人間がそんなことをすれば、どうなるかは目に見えている。
つまり、同士討ちである。
「がっ!?」
「うぐぉ!?」
仲間の凶弾に、密猟者達は自滅していった。
俺は樹の陰に身を潜め、銃声が止むのを待った。
本来ならば殺さずに逮捕した方が望ましいのだが、こんな状況ではそんな事は言っていられない。
やがて銃声が止み、辺りが静寂に包まれる。
そっと陰から様子を伺うと、もう動いている人影は見えなかった。
倒れている密猟者達に近づき、脈を確認するが、もう生きている者は居なかった。
・・・ある意味、密猟者らしい終わり方だな・・・。
あまり知られてはいないが、密猟者が狩場で死亡する原因は、モンスターより人間の手によるものの方が多い。
報酬の分配で仲間割れしたり、騙まし討ちにあったり。
それでも密猟者が後を絶たないのは、やはりモンスターは金になるからだ。
俺たちハンターだって、金を得る為にモンスターを狩る。
結局の所、密猟者達とやってることは大差ないのだ。
「・・・危ない!」
思考に沈んでいた俺に、鋭い声が飛ぶ。
顔を上げると、枝の上にナルガクルガが居た。
「え?」
何が、と聞く前に、俺の後頭部を衝撃が襲った。
視界がぐらりと揺れ、その場に崩れ落ちる。
「ユーリ!」
「動くな!」
頭の上で、ガチャン、と弾を装填する音がした。
それにこの声は・・・さっきのリーダー格の男か。生き残ってたのか・・・。
どうやらボウガンの砲身で殴られたみたいだ。
「妙な真似すればこいつの頭が吹き飛ぶぞ!」
あまりにもお決まりな台詞に、俺は危機感よりも可笑しさを感じてしまう。
油断して人質になってしまった自分もそうだが、人質の通用しない相手に無駄な脅しをかけている男が、更に滑稽さを増してくれる。
目だけを動かしてナルガクルガを見ると、やはり何の動揺もしていないようだ。
まぁそうだよな。飛竜が人間の心配をするはずが無い。

俺はこのまま、この男かあの飛竜に殺されるだろう。

そう覚悟を決め、目を瞑ってその瞬間を待つ。
まさかこんな形で人生の終わりを迎えるとは思わなかった。
しかしまぁ、ハンターとしては相応しい終わり方にも思えた。
狩場で戦って死ぬのだから、ある意味とてもハンターらしい死に方だ。
相手が密猟者と人間になってしまった飛竜ってのは、ちょっと情けない気もするが・・・。



しかし、何時まで待ってもその瞬間は来なかった。
妙に思って、恐る恐る目を開けてみると、飛び込んできたのは
「ニャー! 旦那さん気付いたニャ!」
泣き出しそうなコタローの顔だった。それも人になった時の。
「旦那さん! しっかり、しっかりするニャ!」
今度はトウマまで出てきた。こっちも人になってる。
「お前らどうしてここに・・・っつー・・・!」
ずきりと痛む後頭部を押さえる。
押さえた手を前に持ってくるが、血は付いていない。
痛みはするが、どうやら出血まではしていないようだ。
「旦那さん、氷結晶持ってきたからこれで冷やすニャ。」
「あ、あぁありがとう・・・。」
トウマが布に包んだ氷結晶を当ててくれる。
「オイラたち、旦那さんが心配で、急いで後を追いかけてきたんだニャ。」
「そうだったのか・・・。」
「そしたら妙な連中に囲まれてるし、裸の男と一緒に出てくるしで・・・。」
「あ! そういえばあいつは!?」
「呼んだか?」
すとん、と軽やかな音を立てて、ナルガクルガが目の前に着地する。
「いや、無事かと思って・・・。」
「怪我は無い。それに、あいつもそいつらが片付けてくれた。」
指差した先を見ると、俺を殴ったと思しき男が倒れていた。
「オイラのハンマーで一撃だったニャ!」
あ、そういえばコタローは打撃武器だったか。
「それより旦那さん、この人もしかして・・・。」
トウマが不安げな目で問いかけてくる。
「あぁ、なんと言うか・・・お前らの薬でこうなってはいるが、ナルガクルガだ。」
「ニャー!? やっぱり!」
「ニャ!? ニャー!?」
怯えきった様子で、トウマは俺の後ろに隠れる。
それにつられる様に、コタローも隠れる。
大の男が3人も固まると暑苦しいんだが・・・。
「オ、オイラ昔襲われた事あるニャ・・・」
「オイラも・・・。」
あぁなるほど・・・。
確かにナルガクルガはアイルーにとっちゃ天敵だろうな・・・。
「俺はお前らなんぞ知らん。別のやつだろう。」
「それでも怖いものは怖いニャー!」
「そうだニャー!」
「はは・・・あ、そういえば、お前名前は?」
「・・・何?」
「何時までもナルガクルガじゃ、呼びづらいし、他のナルガクルガと区別が付かん。だから名前教えてくれ。」
「・・・トトル。親はそう呼んでいた。」
「よっし、じゃあトトル。悪いけどちょっとポッケ村まで付き合ってくれ。」



それから俺たちはポッケ村に引き返し、密猟者の男の引渡しを行った。
実はこの男結構な賞金首だったらしく、多額の報奨金がもらえた。
その後すぐに俺は再び発とうとしたのだが、嬉しい誤算があった。
トトルのお陰であの二人が大人しくなって、以前通りの過ごしやすい家になったのだ。安心して家に居られる以上、無理に出て行く必要も無い。
トトルの方ははすぐにでも樹海に帰りたがると思ったのだが、人間の暮らしぶりに興味が沸いたのか、怪我が治っても未だ家に留まってくれている。
それはそれで嬉しいのだが、俺としてはトトルを人間にしてしまった責任があるので、なるべく早く元の姿に戻してやりたかった。この村に連れてきたのも、人の姿のトトルをそのままにするのは忍びなかったからだ。樹海に戻って元通りの生活を送るには、人間の体ではあまりにも非力すぎる。
しかしあのネコバァの秘薬は、コタローが使ったものよりだいぶ改良されているらしく、一向に戻る気配が無い。
それどころか・・・
「ユーリ。ユーリはこの『めいどふく』は着ないのか?」
「着ませんっ! つーかどこで知ったそんな単語!?」
「コタローたちが話してた。」
あのレイパーアイルーどもに毒されたのか、変な知識ばかり身につけてくる。
「そうだユーリ。」
「今度は何だ!?」
「まだ答を聞いてない。何故あの時俺を助けた?」
「うぇ!? あー・・・その・・・。」
俺は恥ずかしさをごまかす為に頭を掻きながら答えた。
「ギルドの規則で、密猟されそうになってるモンスターの保護ってのもあったけど・・・なんつーか、必死に生きようとしてるトトルを、殺したくなかったんだよ・・・。」
「自分が、殺されるかもしれなかったのにか?」
純粋な目で、トトルは聞いてくる。
「むしろ、だから、かもな。自分の手で引導を渡すならともかく、あんなろくでなしの連中にお前を渡すのは惜しかったっつーか・・・。」
「ユーリ。」
「うぉ!?」
いきなりトトルに抱き締められ、俺は変な声をあげてしまう。
「俺も、あんな連中に殺されるのは嫌だった。」
「あ? あ、あぁうん・・・。でも、俺だって似たようなもんだぜ? ハンターライセンスが有ろうが無かろうが、お前たちを殺して生活してるし・・・。」
「ユーリは、いいんだ。」
「へ?」
「ユーリなら、俺は」
「ニャー!? 旦那さん!? 旦那さんがー!」
その先の言葉は、アイルーたちにかき消された。
「何してるニャ!? 旦那さんに何かしたら、ナルガクルガでも許さないニャ!」
「その手を離すニャ! この蝙蝠野郎!」
邪魔された怒りからか、無言で二匹を睨みつけるトトル。
あの・・・目が真っ赤に光ってますよ・・・?
「・・・うるさい。」
「わーっ! 待て! ここで飛び跳ねるな! 部屋がーっ!!」

結局、この家に平穏が訪れることはもうあまり無さそうだ。


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