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赤虎アイルー

某所で書き溜めたSSの保管庫

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31-3:査察の査察(後編)

お待たせしましたラストです。
どぞー。




「では改めまして・・・申し遅れましたが、私はエルバート・エルマ・クライネル。アーヴィングの兄です。」
「は、はぁ・・・あのそれよりアーヴィンが・・・。」
慇懃に挨拶をするエルバートさんとは対照的に、その腕の中ではアーヴィンがぐったりとしている。
・・・出会い頭にいきなり抱きつかれ、散々撫で回されてたから無理もないが。
全く・・・見ているこっちが恐ろしくなるくらいの撫で回しっぷりだった・・・。
「本当、いきなりでびっくりしました・・・手紙が着いた当日にいらっしゃるなんて・・・。」
そう言いながらもキーツさんはてきぱきとお茶の準備をこなしている。
「手紙だけで済ませようかとも思ったんだけど、どうにか休みがとれてね。いてもたってもいられずにこうして来てしまったよ・・・はぁでもキーツもあー君も元気そうで良かった・・・。査察の仕事を引き受けて家を飛び出していった時はどうなることかと思っていたよ・・・。」
・・・今正にエルバートさんの腕の中でそのあー君がどうにかなってる訳だが・・・突っ込まない方がいいんだろうな・・・うん・・・。
「キーツさん、アーヴィンが家を嫌ってるのってもしかして・・・。」
「はい・・・大体ご想像の通りです。あー君は末っ子だったせいでご一家全員に可愛がられていたんです・・・あんな感じに・・・。」
「あー君、ちゃんと御飯は食べてるのかい? ちょっと痩せたみたいでお兄ちゃんは心配だよ・・・偶にはこっちにも顔を見せてくれないと・・・。」
小声で話し合う俺たちにはお構い無しに、兄弟で、というより一人でエルバートさんは何かの世界を形成している。
と、その時、玄関のドアが開いて誰かが入ってきた。
「こんにちはー。お客よー・・・ってあら? えっちゃんも来てたの?」
「あ、ラジー・・・と、そちらの方は?」
入ってきたのはラジーと、もう一人は長身の偉丈夫だった。
・・・薄い金髪に、青い目。まさか、このパターンで行くと・・・。
「スヴェン坊ちゃま!?」
キーツさんが驚いた様子で声を上げる。
「いよう、キーツにあー坊。来てやったぞ。」
軽い調子で挨拶するその姿からは想像できないけど・・・。
「えーと・・・キーツさん、この人もアーヴィンのお兄さん?」
「はい。スヴェン・ガルダ・クライネル。クライネル家の次男であらせられます。」
貴族でも色んな人が居るもんだなぁ・・・格好だけ見たらハンターか傭兵の類にしか見えないけど・・・。
「お、こっちのあんちゃん二人はハンターか?」
「あ、はい。」
そういや俺とトトルはまだ自己紹介してないや。
知り合いの兄弟とは言え、ちゃんと失礼の無いようにしておかないと。
「俺はユーライア・エリクソン。こっちはトトル。このポッケ村でハンターやってます。」
「・・・へぇ。」
「あなたが・・・。」
う、うん・・・?
何かいきなり兄二人の視線が鋭くなったような・・・。
「そっかあんたが・・・いやぁまさかこんな早く会えるとは思わなかったぜ。」
「まさか『あの』エリクソン氏に道案内をして貰っていたなんて・・・。」
えーと・・・何? 何なんだ一体?
「ほら二人ともー。ユーリが混乱するかそういうのやめなさーい。」
ぱんぱんと手を叩いてラジーが横から入ってくる。
「全く・・・変なとこで回りくどいのは昔と変わってないわね。」
「あ、そういやラジーは二人と知り合いなの?」
「まぁ幼馴染ってやつね、よく遊んだりしたから。」
しかしその言葉に二人からすかさず反論が飛び出る。
「クラウディア・・・拳で他人を従わせるのは遊ぶとは言わないよ。少なくとも常識的な人間は。」
「あと頭を踏んづけて謝罪を要求するのもな。」
「うっさい。あれは私のお気に入りの人形を壊したあんた達が悪い。」
貴族って・・・貴族って・・・!
「ほらユーリがドン引きしちゃってるじゃない!」
「今のはお前が悪いだろ。」
「そうだよクラウディア。君は昔からそうだったけど、そろそろ落ち着いてご家族を安心させたらどうだい?」
「そうだぞクラウディア。何なら今からでも俺の求愛を受け入れるか? 俺は何時だってお前を受け入れるぜ?」
「冗談きついわぁ。すーさん冗談きついわぁ。」
「だからすーさんはやめろっての。」
・・・うん?
「えーと・・・ラジーとスヴェンさんはそういう・・・?」
「ちょっとやめてよユーリ。こいつと付き合ってたのは昔の話で、私の中じゃ人生の汚点なんだから・・・。」
「あははごめんごめんだからお願い怖い顔で見ないで。」
しかしこうして見るとすごいメンツだな・・・。
貴族でも由緒あるとこのご子息三人に、ラジー本人は言いたがらないけど、多分良家のお嬢様が一人。
・・・何か自分が場違いに思えてきた。
「え、えと、じゃあ幼馴染で積もる話もあるだろうし、俺とトトルはこの辺でお暇・・・。」
「まぁまぁそう言うなって。えーと、ユーリだっけ? 俺のことはスヴェンでいいからよ。」「私のこともエルバートで構いません。ユーリさんにも関係のある話なので、どうかもうしばらくはお付き合い下さいませんか?」
「は、はぁ・・・。」
・・・なんだろう、悪い予感しかしない・・・。
「あー君が査察任務でこの村に来てるのはご存知でしょう? 機密なのであまり詳しくは言えないんですが、その・・・あー君の仕事ぶりがあんまり・・・。」
「・・・芳しくない?」
「ま、そんなとこだな。で、見かねたうちの親が俺たちも遣した訳だ。」
「はぁ・・・。」
そりゃあただ報告をするだけとは言え、世間知らずで仕事もしたことないお坊ちゃまにはきついかもしれない。
けどだからって、そこで兄弟を送るって・・・やっぱ貴族の考える事ってようわからん・・・。
「え? え? でも書類はきちんとしていたはずですが・・・。」
「・・・あれ、キーツが書いたものだろう? 流石にそれくらいは私達にもわかるよ。」
「うっ・・・。」
「全く、何時までもキーツに頼って・・・お子ちゃまだなぁあー坊はー。」
「・・・う、うーん・・・うわっ!? 何でスヴェン兄貴まで居るんだよ!?」
「おいおい、せっかく来てやったのにそれは無いだろーははは。」
「ぎゃああああ!! 髭! 髭はやめろおおおぉぉ!!」
「ほんとあー君は何時まで経っても可愛いなぁ・・・。」
最早見るに耐えないほどの可愛がりぶりに、俺は思わず隣のラジーに話しかける。
「・・・昔からあぁだったのか?」
「えぇ、昔からあぁよ。」
不憫だ・・・。
「はっ! すいませんどうも取り乱しまして・・・。」
「い、いえ・・・。」
今更居住まいを正された所で、横でボロボロになってるアーヴィンで全部台無しな気がするが、とりあえずそこは無視して。
「そういうわけで、しばらく私たちもこちらでご厄介になりますので、よろしくお願いしますね。」
「・・・はい?」

それから数秒置いて、ラジーが、キーツが、アーヴィンが、絶叫したのは言うまでもない。
その中で唯一平然としているのは、出された茶菓子を貪っていたトトルだけだった。


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