赤虎アイルー

某所で書き溜めたSSの保管庫

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3-2:影を絶つ(中編)

お待たせしました中編どうぞー




「・・・とりあえず、逃げるっ!」
あの煙が何かは分からないが、今は命の方が大事だ。
俺は回れ右して全速力で駆け出した。
しかし、黒い影は俺を逃がさない。
木々の間を縫うように、枝から枝へ跳び、俺の前に回りこんできた。
「くそっ!」
再び矢を番え、影に狙いを定める。が
「・・・にっ、人間!?」
危うく矢から指を離しそうになるが、どうにか止める。
俺の前に立ちはだかった影は、ナルガクルガではなく、人間だった。
いや、正確に言えば人間ではない。人間には、尾は生えていない。
腰の下辺りから伸びている太く長い尻尾は、毛が逆立ち、血が滴っていた。
一糸纏わぬ肢体も、傷だらけだ。
その傷だらけの体で、人間以外の何かは片方しかない目で、じっとこちらを見据えてくる。
まさかとは思うが・・・尾っぽといい怪我の状態といい・・・やっぱりこいつは・・・。
そこまで考えた時、遠くの方から声が聞こえた。
「おい! どこに行った!?」
「こっちだ! こっちに通った跡がある!」
声に続いて、大勢が動く気配も伝わってくる。
この感じだと、かなりの大人数のようだ。
・・・おかしい。ハンターならば一度に動く人数は最大でも4人のはず。
となると・・・密猟者か。
「・・・ッ!!」
目の前のやつも気配を感じたのか、姿勢を低くして唸り始めた。
まずい。今興奮状態になられたら・・・!
しかし俺の予想に反して、そいつはその場に倒れてしまった。
警戒しながらも近づくと、まだ息はあるが、最早事切れる寸前だとすぐにわかった。
まぁ、この傷では無理も無いか・・・。
「そろそろ近いぞ!」
「お前ら準備はいいか!?」
密猟者たちの声は、更に近い所から聞こえた。
どうやら、こいつの位置を正確に把握しているらしい。
さて・・・どうしたものか・・・。

密猟者と言うのは、ハンターにとって敵である。
獲物を横から掻っ攫って行くと言う意味でももちろんそうだが、それより重要なのは、やつらが無法の徒であるという事実だ。
やつらはハンターに見つかれば、ギルドに通報され、逮捕される。
それを防ぐ為にはどうするか?
一番手っ取り早い方法は、目撃したハンターを始末する事だ。
ハンターは常に死と隣り合わせであるから、狩場で死んでも誰も不審に思わない。
モンスターにやられたように見せかける細工も付いていれば完璧だ。
だがハンターも黙ってやられるわけではない。
俺たちの扱う武器は対飛竜用とは言え、人間にも充分な殺傷能力を発揮する。
だから大抵の場合、ハンターと出会っても逃げるのはやつらの方だ。
しかし、今俺はきちんとした戦闘用の装備じゃない上に、一人だ。
大勢でかかれば殺せると、やつらだって思うだろう。
無論、俺だって黙ってやられるつもりは無い。
だが相手の戦力と人数も分からない以上、それは避けたかった。

俺は、足元に倒れている青年を見つめた。
一番確実なのは、こいつを放ってここから離れることだ。
非情ではあるが、こいつもこっちを襲ってきた以上、俺に付き合う義理は無い。
やつらも獲物を得れば、ここからさっさと退散するだろう。
だが・・・。
「一撃で仕留めろ! 今度こそ逃がすんじゃねぇぞ!」
いよいよ近づいてくる声と足音に、俺は覚悟を決めた。


「おい。しっかりしろ。おい!」
「・・・ぅ。」
結局、俺はこいつを助ける事にした。
傷だらけの体を抱え、近くにあった巨木の虚に運んだ。
虚の入り口は草で隠したし、人がやっと通れるだけの大きさだから、やつらも気付かないだろう。
問題はこいつの傷の方だ。
相当手酷くやられたらしく、出血がひどい。
荷物からなけなしの包帯をあるだけ使って、更に毛布で全身を包んだが、これではそのうち失血死するだろう。
幸いまだ意識はあるが、それも時間の問題だ。
「こうなりゃ一か八かだ・・・!」
緊急用に取っておいた、いにしえの秘薬を飲ませる。
人間用の薬がこいつに聞くのか疑問だったが、どうやら功を奏したらしい。
傷はどんどん塞がり、血も止まってきた。
「おい、大丈夫か? 返事しろ。」
「ぅ・・・あ・・・。」
目の焦点が徐々に戻ってくる。
ふと気付いたのだが、片目は潰れているのではなく、血で塞がっていただけの様だ。幸いにも、傷は目からそれていた。
「ちょっと沁みるかもしれないけど、我慢しろよ。」
手ぬぐいに水を湿らせ、顔に付いた血と汚れを拭き取る。
「どうだ? ちゃんとこっちの目も見えるか?」
「・・・あ。」
こくり、と首を縦に動かし、答えた。
「よし、他に痛い所は?」
ふるふると首を横に振る。
「じゃ、これでも食え。血が足りないだろ。」
先ほど食べた、干しオイルレーズンを口に含ませる。
ゆっくりと咀嚼させ、時々水も飲ませる。
「・・・甘い。」
「・・・っその方がいいんだよ。すぐ血になるから。」
正直、驚いた。飛竜もこうなると人間の言葉が話せるのか。
それからしばらく食べさせ続け、落ち着いてきた所で聞いてみる。
最早確信気味だが、初めに感じた、あの疑問だ。
「お前・・・ナルガクルガだよな?」
「お前たちは・・・そう呼んでる。」
青年は縦に裂けた瞳孔を揺らしながら、静かにそう答えた。
言葉がたどたどしいのは、怪我のせいか、不慣れな口の形で喋っているせいか。
「いきなり、お前たちの姿になって、びっくり、した。」
「あー・・・それは俺のせいだ。すまん・・・。」
多分、あの皮袋にアイルーたちがネコバァの秘薬を詰めていたのだろう。
しかし飛竜にも効くとは・・・ネコバァ恐るべし。
「お前、も、姿の変わった、・・・ナルガクル、ガ、なのか?」
「いや・・・俺は元から人間だ。」
「そう、なの、か? お前からは、俺た、ちの、匂いが、する。」
「あぁ・・・それは多分、こいつのせいだな。」
目の前に、闇夜弓【影縫】を差し出す。
「これは・・・」
「お前たちの体から作った武器だ。だから匂いがするのも当然だな。」
「そう、か・・・。」
「・・・何とも思わないのか?」
「・・・何がだ?」
「自分達の同族を殺されて、こんな姿にされて。」
「・・・弱ければ、殺される。それだけのことだ。」
そう言い切る瞳に迷いは無く、あぁこれが飛竜というものか、と思い知った。
彼らは常に己が身一つで戦い抜く。そして弱ければ死ぬ。
何て残酷で、純粋なんだろう。
「お前、名前は?」
「え? あぁ、ユーリだ。」
「ユーリ・・・なんで、俺を助けた?」
じっと、まるで底の見えない瞳で問いかけられる。
「そ、れは・・・」
「誰か来てくれ! こっちで何か物音がしたぞ!」
俺の答えは、怒声でかき消された。
どうやらやつらもそれなりの手練らしい。
まさかこうも早く見つかるなんて・・・!
「あいつら・・・!」
「待て、今は動くな!」
起き上がろうとするナルガクルガを制し、俺は弓を手に取る。
「そんな体じゃまだマトモには動けない! 今は」
だが、俺の制止などお構い無しに、やつは飛び出してしまった。
「くそっ!」
こうなっては仕方ない。俺は立ち上がり、後を追った。


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