赤虎アイルー

某所で書き溜めたSSの保管庫

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3-1:影を絶つ(前編)

少し長いので三部に区切ってあります。
続きは明日辺りにでも。それでは第三弾どうぞ。




腐葉土を踏みしめながら、俺は空を仰いだ。
ここじゃ似たような光景が続くから、時々方位磁石や太陽の位置を見ながら進まないと、すぐ迷う事になる。
「はぁ・・・ぜぇ・・・流石にいきなり樹海越えはきつかったか?」
とりあえず一息つこうと、適当な岩に腰を下ろした。
あんなひどい家には一秒も居たくなくて、取るものもとりあえず飛び出してきたわけだが、やはり商隊が通りかかるまで待った方が良かっただろうか・・・。
そうすれば護衛代わりにタダで同行できて、食料とかの心配もないし・・・。
「ま、無いものねだってもしょうがないか・・・。」
荷物から少しの水と干したオイルレーズンを取り出し、口に含む。
水で戻しながら噛み続けると、ねっとりとした甘みが口に広がる。
やっぱ疲れたときは甘いもんだよな、うん。
「さってと。そいじゃこのまま北に・・・。」
立ち上がりかけて、俺は固まる。
首筋の辺りがぞわぞわするこの感覚・・・!

・・・来る!

咄嗟に前の方に飛ぶと、今まで立っていた地面が黒い影に覆われた。
長い尾に刃の様な翼、強靭な四肢。
そして赫々と光る眼。
まさかこんな状況でコイツに出会うなんて・・・!
「ナルガクルガ・・・!」
はっきり言って、限りなく最悪の状況だ。
護身用の弓として闇夜弓【影縫】は持ってはいるが、防具は旅装用の軽装。
アイテムも食料や水ばかりで、回復薬や閃光玉も無い。
それに何より、今の俺は依頼を受けている身ではないのだ。


世間一般では、ハンターは野放図な生活を送っていると思われがちだが、
実際はギルドによって厳しく管理されている。
どのモンスターを狩猟するかも、前もって綿密な調査が行われて後、報酬の交渉などを経て正式に依頼として公布されるのだ。
よって、ギルドはギルドに属さない、もしくは依頼に準じていない狩りを行うハンターを、密猟者として厳重に処罰する事で知られている。
場合によっては、ハンターライセンスの剥奪だけでなく、極刑までも。
だが無論、何事にも例外はあるように、ハンターにも自己防衛は認められている。
依頼遂行中の遭遇でなくとも、生命の危機があると判断した場合には、モンスターを排除することも許されている。
しかしそれでも、無闇な殺傷は禁じられているのだ。


つまり今現在の俺は、絶望的な装備でナルガクルガを生かさず殺さず撃退しなければならないわけだ。
これ以上最悪の状態など、他にあるだろうか?
だがいくら嘆いてもしかたない。
俺はどう逃げるか、頭の中で算段を立て、すぐさま行動に移した。
しかし、ナルガクルガの行動は俺より速かった。
腰の道具入れに手を伸ばしたところで、そうはさせまいと飛び掛ってきたのだ。
俺は横に跳んで避けようとしたが、ほんの少しの差で、ナルガクルガの爪が道具入れを引き裂いた。
中身が辺りに散らばり、俺が使おうとした煙玉も転がっていってしまう。
「くそっ・・・!」
あれで煙幕張って逃げようと思ってたのに・・・!
こうなれば隙を見て逃げ出すしかないか・・・。
そう思ってナルガクルガの方を見ると、今更だが妙なことに気付いた。
体が傷だらけなのだ。両腕と尻尾に大きな裂傷があり、片目も潰れている。
でも確か最近集会所にはナルガクルガの依頼は来てなかったような・・・。
・・・まさかこいつ、本当の密猟者に狙われて・・・!?
しかしそう考えれば、こいつの状態も理解できる。
ナルガクルガは獰猛だが、獲物は一撃で仕留める。
だがさっきから、動きに精彩が無いというか、現に今も俺を捕まえ損ねている。
もはや形振り構わず、人間への怒りだけでこちらに襲い掛かってきているのだ。
けど、今の俺にとってこれは幸運以外の何者でもない。
こいつには悪いが、適当に弱らせて追い払ってやる!
矢を弓に番え、狙いを定めようとした時、更なる幸運が俺にやってきた。
先ほど道具入れを引き裂いた爪に、何かが引っ掛かっていた。
よくよく見れば、それは俺が爆薬入れに使っている皮袋だった。
俺は迷うことなく、その袋目掛けて矢を放つ。
ダメージは少ないだろうが、でかい音でこいつを怯ませることはできるはずだ。
そして狙い通り、矢は袋を貫いた。
だが、爆発は起こらず、代わりに奇妙な煙がナルガクルガを覆う。
「・・・な、何だ!?」


あの袋が幸運ではなく、むしろ不幸だったと俺が知るのは、それからすぐだった。





「ニャー! 急いで旦那さんを追いかけるニャ!」
「待つニャコタロー! ネコバァの秘薬が無いニャ!」
「ニャー!? ど、どこにやったニャ!?」
「確か爆薬入れと同じ皮袋に・・・ニャ!?」
「爆薬入れの袋がここにあるということは・・・旦那さんまさか!?」


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