赤虎アイルー

某所で書き溜めたSSの保管庫

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16-3:春の来訪者(後編)

これで最後です。お付き合いありがとうございました。
ではどうぞ。




日も沈んで暗くなってきたところで、俺達は再び出発した。
「火山や密林みたいに、特に地形が変わるわけじゃないんですが、月の光が樹のせいで届かないんで、大分暗くなってます。足元注意してください。」
「わかりました。」
「・・・。」
「・・・。」
・・・あーもー・・・相変らず空気重いな後ろの二人は・・・。
あれから色々考えてみたが、キーツさんとアーヴィンが査察の人間だろうとなかろうと、案内をさっさと終わらせてしまうのが一番だろう、という結論に至った。
あんまり長引くとトトルの正体がばれる可能性もあるしな。
全体の案内は昼間に終わってるので、そこからは特に説明することも無く、順調に進んでいく。
まぁ今の時期大型モンスターはまだ冬眠中のが多いから、何か出るとしてもランポスくらい・・・っと
「止まって下さい。」
俺が小声で呼びかけると、全員気配を察したのか、姿勢を低くして茂みに隠れる。
こういうとこは流石にハンターだな・・・って感心してる場合じゃないな。
「トトル、数はどれくらい居るかわかるか?」
「・・・5か6・・・でかいやつはいないみたいだ。」
ドス系はいないってことか。
俺は前方に見つけたランポスの群れに、再び目をやる。
青い鱗のおかげで、暗い視界の中でもよく目立つ。
さて、このままやり過ごすか、それとも蹴散らすか・・・。
「キーツさん、この人数なら余裕で倒せると思いますが・・・どうします?」
「このまま待って数が増えても困りますし、今のうちに倒した方がいいかもしれませんね・・・。」
「なら決まりですね。トトル、アーヴィン、準備は良いか?」
「あぁ。」
「大丈夫です。」
「よし、それじゃ・・・!」
俺が放った矢を嚆矢として、全員が動き出す。
矢はそのまま一頭の頭に突き刺さり、仕留めた。
トトルは左、アーヴィンは右から回り込み、各々の武器で切り伏せていく。
キーツさんは俺の後ろで狩猟笛を振り回し、皆を援護する。
ランポスたちはその音に引き付けられ、こっちに向かってくるが、俺はそれを射ち漏らすことなく射止めていく。
狩猟笛の恩恵を受けるのは久々だが、やはりこの支援効果はすごい。
感覚が研ぎ澄まされるようで、矢を番え弓を引く一連の動作に、全く疲れを感じないし、狙いも何時もより数段正確になっている。
やがて数分と経たない内に、動くランポスは居なくなった。
数を数えると、全部で五頭。うん、やっぱ樹海でのトトルは頼りになるな。
「これで全部みたいです。お疲れ様でした。」
「ふぅ・・・とりあえず皆さん怪我が無いみたいで何よりで・・・っ!」
しかしその油断がまずかった。
キーツさんの後ろの茂みから、隠れていたもう一頭が飛び出してきた。
「キーツさん!」
今から弓で狙いを付けても間に合わない、こうなったら直接矢で・・・!
だがその時、アーヴィンの鋭い声が響く。
「キーツ!」
「は、はいっ!」
え・・・先生じゃなくて呼び捨て・・・?
などと場違いな感想を抱いていると、更に場違いなものが現れた。
「ギィっ!」
そしてその場違いなものはランポスを強かに打ちつけ、絶命させた。
「え・・・? し、尻尾・・・!?」
そう、棘と銀色の鱗に彩られた、先の部分が膨らんだ尻尾。
それが、キーツさんの腰から、防具を突き破って生えてきたのだ。
しかしこの尻尾の形と色は・・・
「銀レウス・・・!?」
銀レウス、というのはハンターの間での通称で、正確にはリオレウス希少種と呼ばれている。
銀色の鱗を持ったリオレウスで、通常の雄火竜に比べて圧倒的に高い戦闘力を誇る、空の王者という称号に相応しい存在だ。
しかしその尻尾が生えてるってことは、キーツさんは・・・
「あ、あの違うんですこれはですね、そのなんというか、実はこういうのが生えちゃう持病で、決して私はリオレウスの変異体でなくてですね!」
今自分で言った。
今自分でリオレウスの変異体って言った。
そしてそれを聞いたアーヴィンがずかずかこちらに近づいてきた。
「何してるんだこの馬鹿! ランポスなんかに襲われるどころか自分で正体バラしやがって!」
「い、痛い痛い! 足は止めて踏まないでお願いあー君!」
「人前であー君言うな!」
「い、いひゃいいひゃい!」
頬を引っ張られて面白い顔になってるキーツさんには悪いが、俺は思わず噴出してしまう。
「まぁまぁ、よく分からないけど落ち着いてあー君。」
「そうだぞ。怪我が無くてよかったじゃないか。あー君。」
「テメェらまであー君言うな!!」
怒り散らすアーヴィンの様子は、正に歳相応の子供らしいもので、先程までの不機嫌そうな顔が嘘のようだ。
「まぁまぁ、とりあえずベースキャンプまで戻ろうかあー君。」
「あんまり騒いでるとまたランポスが来るぞあー君。」
「う、うがあああぁぁぁ!」
「アーッ! 尻尾! 尻尾引っ張らないで下さいいいい!!」


それからベースキャンプに戻り、俺達は焚き火を囲んで色々話していた。
「ええとですね・・・もう今更かもしれないんですが、私はリオレウスの変異体なんです・・・。元はあーく・・・アーヴィン君の家で飼われていました。」
「うん? じゃあ師弟ってのはやっぱ嘘?」
「えと・・・歳の離れた男二人ならそういう関係の方が不自然じゃないだろうっていう、あーく・・・アーヴィン君の提案で。武器や防具もそれっぽく見えるようにって。」
まぁ確かに正直にペットと飼い主です、って言われたら引くわな。
しかしリオレウスを飼えるなんて・・・
「アーヴィンの家って相当金持ちなんだなぁ。」
「・・・ふん。」
あらら・・・またそっぽ向かれちゃった。
「あ、すいません・・・あまり実家の話は好きじゃないんです。」
「はぁ・・・。しかしどうやって変異薬を・・・? あれは今ギルドが本格的に取り締まってて、そう簡単に手に入らない筈・・・。」
「お前らの査察役を引き受ける代わりに、親父からくすねたんだよ。」
「・・・はい? え、二人とも査察の人だったの・・・?」
キーツさんのインパクトが凄すぎて、すっかり忘れてた・・・。
でも親父って・・・
「キーツさん・・・もしかしてアーヴィンは・・・」
「多分想像の通りだと思います。本名はアーヴィング・ライアス・クライネル。クライネル家の三男に当たります・・・。」
「クライネル家って・・・あのクライネル家!?」
確か、ギルドの幹部の中でも、特に古株の血筋だ。
ハンターズギルド設立にも、深く関わってるとか何とか・・・。
でもそれなら確かに、リオレウスの、しかも希少種を飼える財力と変異薬の説明が付く。
「あー君すごいんだなぁ・・・。」
「だからあー君言うなっつってんだろ!」
「あ、あのでも査察と言っても、ほとんど家出半分なので、あまり気にしなくても大丈夫ですから!」
「・・・家出?」
何でもキーツさんが言うには、さっさと実家を出ようとするアーヴィンに、本当に家出されるくらいならと、親が出した条件であるらしい。
・・・俺からすると、金持ちの道楽にしか見えないが。
「定期的に報告書出せとか言われてるけど、まぁ適当に誤魔化しとくから安心しろ。俺は人の秘密をちくったりするのは嫌いなんだよ。」
「もう・・・そういう時は『よろしくお願いします』って言うんですよ。」
「うるせぇ!」
なるほど・・・この二人の関係を見るに、キーツさんは保護者代わりに付けられたわけか。しかしそれにしても・・・。
「ちと聞きたかったんだけど、どうしてトトルや俺のこと睨んでたんだ?」
「べ、別に睨んでなんかねぇよ!」
「いや、睨んでたぞ。すごく。」
「う、うぅ・・・睨んでねぇったら睨んでねぇ!」
むきになって否定するのが妙に怪しかったが、その日は深く追求せず、その場は解散となった。


そして後日、実はアーヴィンとは幼馴染だったというラジーからこんな話が聞けた。
「あー、アーヴィンのやつね、昔っからこんな性格だったから友達居なくてねー。キーツだけが友達って感じだったのよね。そのせいかキーツに対する独占欲がすごくてね。他の奴がキーツに触ったりするとすごい不機嫌になるのよ。」
「おま、クラウディアテメェ!」
「ちょっとー、今はラジーで通してるんだから本名出さないでよ。だからね、同じ飛竜のトトルとか、お喋りしてたユーリに嫉妬したんじゃないのー?」
「・・・そうだったのかあー君。」
「ぶっ、やだあんたまだあー君って呼ばれてるの? ケッサクー!」
「う、うがあああああああぁぁ!!!」


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