赤虎アイルー

某所で書き溜めたSSの保管庫

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11:家庭こそ戦場

気が付いたらうわ妊婦強い。
なんだかそんなのばっかりです。まぁどうぞ。




夕飯時には、我が家では皆でなるべく食卓を囲むようにしている。
各々食べるものはバラバラだが、だからこそこの時間は貴重だと思う。
何故なら
「なぁなぁ今日はエルトライト食っていーい?」
「ダメだ! マカライトで我慢しとけ! あ! トトルも氷結晶イチゴ食うな!」
ほっとくと各々本当に好きなものを食べてしまうからだ。
「ほれお前ら座れ! よし、じゃいただきまーす!」
俺の言葉を皮切りに、皆が一斉に食べ始める。
モンスターというのは食欲が人間より強いのか、本当によく食べる。
特にガランは食べ盛りなのか、一度にダース単位で鉱石を食べ尽くすので、我が家の家計は再び赤字気味だ。
「なぁ、そういや聞きたかったんだけどさー。」
「んー? 何だ? エルトライトは当分だめだぞ高いんだから。」
「えぇ~・・・あ、いやそうじゃなくて」
ガリガリ石を咀嚼しながらどうやって喋っているのかは謎だが、ガランがこぼした一言に、食卓の空気が固まった。
「ユーリはトトルと『つがい』なのか?」
「・・・は?」
「あ、えーと、人間じゃつがいって言わないのか? んじゃー、夫婦?」
「・・・よーしガランちょっと落ち着こうか。」
俺はガランの両肩に手を置き、まっすぐ目を見て話す。
「いいか? モンスターの世界じゃどうかは知らないが、人間の世界では雄同士はつがいになれないんだ。それにそもそも人間とモンスターじゃ」
がしゃん、と言う音が食堂に響き渡る。
振り向くと、トトルの足元に皿と料理が零れていた。
「と、トトル・・・?」
「ゆ、ゆゆ、ユーリは俺とつがいになったんじゃない、のか・・・?」
「え? ちょ、トトルさん・・・?」
「・・・尻尾。」
「え?」
「尻尾を毛繕いするのは、つがいになった相手だけなのに・・・!」
「おま、そういう重要な事は先に言えよ!」
「ニャー! じゃオイラも! アイルーもそうなのニャ! 毛繕いはプロポーズなのニャ!」
「それならオイラだって!」
「どう聞いても後付けじゃねぇかテメェら!」
「なんだよ違うのか? じゃ俺とつがいになろうぜ!」
「何でそうなるんだよ人の話を聞け!」
そんな混乱の様相を呈してきた食卓に、玄関の戸を叩く音が届いた。
正に天の助け! 俺はすぐさま立ち上がって戸に駆け寄る。
「はいはーい! お待たせ・・・しまし・・・た・・・」
「夜分遅くに、すまない・・・。」
そこに立っていたのは、傷だらけで自慢の長髪もボサボサのコウライだった。
うんごめん訂正。天の助けどころか要救援者です。
「こ、コウライどうしたんだそんなボロボロで・・・。」
「あ、アンナが・・・」
うわぁその一言で何だか全部わかっちゃうよ。
「とりあえず中にどうぞ・・・。」
「すまない・・・この村では他に頼れる所も無くて・・・。」


そこからは、コウライが手土産に持ってきた酒と、我が家においてある酒を飲みながらの宴会になった。
「そうなんだ・・・元はと言えば私が悪いんだ・・・うぅ・・・。」
「ニャニャー! そりゃアンタが悪いニャ! アンナさんが妊娠中なのに自分だけガブガブ酒飲んで!」
「うぅ・・・アンナ・・・アンナぁ・・・。」
コウライ酔うと泣き上戸なんだな・・・。
しかし・・・そう言えば俺二人の事あんまり知らないんだよなぁ・・・。
「なぁコウライ、どうしてアンナと結婚したんだ?」
「うん・・・? 長い話になるんだが、あれは何年前になるか・・・。」
コウライの話を要約すると、こんな感じだった。
雪山に棲むキリンだったコウライは、ある日妙なハンターたちから「変異薬」を使われ、連れ去られそうになったそうだ。
だが自力で反撃、脱走して、方々をさまよいながら暮らしていた。
そして、その頃に書士隊として派遣されたアンナと出会った。
「初めて出会ったとき、私にはアンナはとても衝撃的な存在だった・・・。」
「おぉ、一目惚れってやつ?」
「いや・・・あのランスの使い方は・・・今思い出しても・・・!」
どうやらコウライが震えるほどのランス捌きだったらしい。
キリンとランスの相性が最悪なのは、ハンターの間では最早常識なのだが・・・一体何をどうすればキリンをここまで恐れさせる事ができるのか。
まぁとにかく、アンナに敗れてからは、彼女の元について仕事を手伝うようになり、そういう関係に自然となったのだそうだ。
ともすれば実験材料にされてしまう存在を守り通し、愛情と信頼を築くとは・・・何時も思うが、アンナの器の大きさは、本当に凄まじい。
「だから私は彼女に・・・ちゃんと・・・言・・・って・・・。」
「コウライ? ・・・寝ちまったのか。」
周りを見れば俺以外の全員が眠ってしまっていた。
・・・もしかしてモンスターって酒に弱いのだろうか?
「すいませーん、うちのがこちらにお邪魔してませんかー?」
玄関の方から件の彼女の声が聞こえて、俺はコウライの体を抱えて立ち上がる。
玄関の方へ行くと、ショールを纏ったアンナが居た。
「やっぱりこちらでしたか。どうもすいませんご迷惑おかけして。」
「あははは・・・いいですよ別に。美味しいお酒も貰いましたし、お礼にこのまま家まで送りましょうか? 流石に身重の女性に男を担がせるわけにもいきませんし。」
「あら・・・ふふ、じゃあお言葉に甘えようかしら。」


アンナの家までの道すがら、気になっていた事を聞いてみた。
「その・・・アンナは不安じゃない?」
「何がですか?」
「色々・・・何時か薬が切れてコウライが戻るんじゃないかとか、そうしたら雪山に帰りたがるんじゃないかとか。」
「んー・・・そうですねぇ・・・。」
お腹に手をやりながら、しかしはっきりした声でアンナは言う。
「もしそうなっても、後悔しないように過ごすつもりです。そうすれば、そうなっても寂しくはないでしょう? この子も私も、それにコウライも。」
「・・・そっか。」
「うぅー・・・ん~・・・あんなぁー・・・。」
寝言でそう口走るコウライに、俺とアンナは噴出してしまう。
「確かにこれなら・・・寂しくなさそうだ。」
「でしょう? あ、そうそう私もユーリさんに言わなきゃいけないことがあったんです。」
「え? 何?」
「トトルさんのことなんですけど・・・この間ナルガクルガの生態について、最新の研究報告が出たんです。それによるとですね」
その研究報告とやらは、俺に更なる追い討ちをかけてくれた。
「ナルガクルガは一生に一度しか、交尾の相手を決めないそうです。」
・・・はい?
それってつまり・・・
「つまり、死ぬまでずっと同じ相手と生きていく、仲睦まじい種なんですって。」
完全に固まってしまった俺に、アンナは笑顔で言う。
「でもそれもわかる気がしますね。ユーリさんとトトルさんを見てると。あ、それじゃここまで大丈夫です。後は私が。」
そう言ってアンナはコウライを俺から受け取り、軽々とした足取りで家に戻っていった。
夜道には、未だ動けぬ俺だけが残された。


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