赤虎アイルー

某所で書き溜めたSSの保管庫

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7-3:狩人の契り(後編)

無駄にシリアスだったけど
これで終わりです。どぞー。




洞窟の中は、飛竜が出入りに利用している天窓代わりの穴のお陰で、意外と明るかった。
穴の真下には巣らしきものもあり、ここがやつの拠点だと一目でわかる。
「ふぅ・・・どうやらあちらより先に着いたみたいですね。」
額の汗を拭いながらも、アンナはそのまま罠を仕掛け始める。
「これでよし・・・っと。さて、あとは待つだけですね。」
各々適当な岩に腰掛け、飛竜の到来をじっと待つ。
しかし・・・なぁ・・・。
俺は今回の狩りのパーティメンバーをぐるりと見渡し、心の中で嘆息する。
何故に俺は、青服の二人とトトルと四人で狩りに来てるんだっけ・・・?



青服二人が帰った後、俺は心ここにあらずの生活を送っていた。

ハンターライセンスを剥奪されたら、この先どうすればいいのか。
トトルは樹海に帰される事になるんじゃないか。
アイルー達とも別れる事になるんじゃないか。
今住んでいるポッケ村も追われるかもしれない。

様々な不安が頭を巡って、何も手に付かなかった。
一緒に住んでる三人や村の人にも心配されてしまい、毎日人が来ては励まされる日々だった。
しかし数日後、再び青服の二人が訪れた時、俺は予想だにしない事態に対面した。

「引越し蕎麦・・・!?」

「あら、ご存知ありません? 東方の習慣なんだそうですけど、引越し先のお隣やお世話になる人に配る」
二人は前回着ていた青服ではなく、何故か普通の私服だった。
妙だとは思ったが、まさかそんな
「い、いやいや! そうじゃなくてですね!? 引越し!? アンナさんとコウライさんの二人が!? ポッケ村に!?」
「えぇ。実は前回来たのも下見みたいなものでして・・・。」
「下見!? 俺の審問じゃなかったんですか!?」
俺の審問はついでかい。
「あ、それもありましたね・・・どうしましょう、ちょっと立て込んだ話になるのですけど・・・。」
「あ・・・と、とりあえず上がってください・・・。」
二人を客間に上げ、トウマにお茶を持ってくるように頼む。
人の姿のトウマを見て、アンナは「彼が以前話していたアイルーですか?」と聞いてきた。
「えぇまぁ・・・。」
「ふむ・・・よければ彼らも交えて話したいのですが、いいですか?」
真面目に話すアンナの様子に、俺はすぐに三人を客間に呼んだ。
全員が揃った所で、アンナは話し始める。
「簡潔に述べますと、ユーリさんが罪に問われる事はありません。」
「ほ、本当ですか!?」
「ただし、これからも変わらずにハンターとして仕事をすれば、という条件が付きますが。」
懐から取り出した書類を俺に渡し、アンナは事の顛末を説明する。

現在、王国の各地でモンスターの「変異体(変異薬で人の姿になったもの)」が発見されていて、ハンターズギルドと王立学術院は総力を挙げて「変異薬」の調査に当たっているが、その成分や出所が掴めない状況らしい。俺の証言を元にネコバァの身辺も調査したらしいが、それらしい薬品の形跡は無かったそうだ。
しかしすぐに解毒薬や解決策が望めないとなると、今確認されている変異体に、早急に何らかの対処をしなければならない。そう考えた両機関は、ある方策を打ち出した。

「それが、『緊急変異体処置計画』・・・まぁ分かりやすく言えば、解決策が見つかるまでは変異体を人の役に立つように使おう、というプランです。」
・・・抽象的過ぎていまいち分からん。
「えと、つまりはどういう・・・?」
「トトルさんみたいにハンターをしてもらったり、コタローさん達みたいにアイルーの仕事をそのまま引き継いでもらったり・・・、まぁそんな感じです。」
本当は実験体として扱おうという意見もあったらしいが、流石に人の姿をしたものにそれはどうなのか、という意見も同時に出て、大変な論争を呼んだらしい。そして最終的にできたのが
「この間言っていた、『倫理規定』ってやつですか・・・。」
「そうです。本人の意思にそぐわない事をしてはならない、というのが基本ですね。あとは普通の人間として扱うように、ともあります。ただ、色々不測の事態が起きる場合も考えて、必ず傍に両機関の人間を置くことが明記されています。」
なるほど、確かにトトルの場合は本人の意思でハンターに志願したし、傍にギルドのハンターである俺がいる。
つまりギルドは、トトルの監視員として俺にハンターのままでいろ、と言ってる訳か。
そしてアンナは、王立学術院側の監視員としてここに引っ越してきた、と。
「・・・何と言うか・・・大変ですね。お互い。」
仕事とは言え、こんな僻地に左遷同然で寄越された彼女に、俺は警戒心より同情を先に覚えてしまった。
だが、アンナはあっけらかんと笑って、こう答えた。
「あら、そうでもないですよ。同じ様な立場の方が傍に居てくださると、何かと心強いですし。」
ね、コウライ?
とアンナが目配せすると、コウライはずっと被ったままだった帽子を脱いだ。
すると、帽子の下から出てきたのは
「つ・・・の!?」
額から生えた、青白く螺旋を描く、角。
そして、その下に生える長い白銀の髪。
そんなまさか、コウライも・・・!?
「コウライも、変異体なんです。元はキリンでした。」
それだけでも驚いて声が出ない俺に、アンナは更に驚くべき提案をしてきた。
「それでお近づきのしるしにひとつ、ご一緒に狩りに行きません?」



そしてよく分からぬまま雌火竜の狩りに連れ出され、現在の状況に至る訳だ。
しかしこんな状況でも体は狩りの動作を覚えていてくれるものだから、意外にもスムーズに狩りは運び、飛竜を巣に追い込む所まで来てしまった。
アンナもコウライもそれなりに書士隊として場数を踏んだ経験があるらしく、見事な武器捌きで危な気なく一緒に戦えた。
それ自体は非常にありがたいんだが・・・
「あの・・・アンナさん?」
「アンナで構いませんよ?」
「えと・・・じゃあアンナ。どうして一緒に狩りをしようなんて・・・?」
「ハンターの方と分かり合うには、そうするのが一番手っ取り早いかと思いまして。」
いや・・・まぁ確かにそれはそうなんですが・・・。
だ、だめだ・・・もう完全にアンナのペースで、つっこめない・・・。
「これから長いお付き合いになりそうですしねー。」
当のアンナは鼻歌を歌いつつボウガンに捕獲用麻酔弾を装填している。
うーん・・・これだけマイペースってのもある意味すごいな・・・。
「そういえば個人的な疑問なんですが」
「うん?」
「ユーリさんは、トトルさんとそういう・・・?」
「なっ!? そ、そういうって、何を・・・!?」
「あらあら。」
その態度が答だと言わんばかりの笑顔に、俺は何も言えなくなる。
「ふふ、正直、安心しました。ますます長い付き合いになりそう・・・っと、来ましたね。」
リオレイアの羽ばたきの音に、俺たちは物陰に隠れ、降りて来るのを待つ。
そして巨体が地面に着くか否かの所で、罠が発動しネットが絡みついた。
そこを逃さずアンナが狙い撃ち、無事捕獲は成功した。
「ふー・・・お疲れ様でした。 さて、それじゃ帰って祝杯を上げましょうか。」
正直、今の俺にとっては、飛竜の捕獲より彼女の言葉が気がかりだった。
そしてすぐに、その言葉の意味を知ることになってしまった。


『かんぱーい!』
と声を上げたのは、俺とアンナの二人だけ。
コウライはもう既に黙々と度数の高い酒を飲んでるし、トトルはもっしゃもっしゃと炎熱マンゴーのサラダを食んでいる。
「・・・お前らなぁ。」
「ふふ。ま、人間は人間同士仲良くやりましょう?」
「はぁ・・・あれ?」
俺はふと、アンナのコップに目がとまった。正確には、その中身に。
祝杯を上げようと言った本人が、ただのジュースを飲むものだろうか?
「アンナ、お酒ダメなのか?」
「え? あぁそういうわけじゃないんですけど・・・むしろ好きなんですけどー・・・。」
「アンナ。」
そこでやっと、今日初めてコウライの口から言葉が出る。
しかも諌める様な口振りで。
「もう! わかってるわよ! 私が今飲めないの知ってて自分だけそんなにガブガブ飲むんだから!」
「飲めないって? 禁酒中?」
「あ、違います違います。まぁある意味そうなんですけど・・・。」
照れ臭そうに頬を掻くアンナの口から飛び出したのは、とんでもない爆弾だった。

「私今、3ヶ月目なんです。」

・・・3ヶ月?
何が? 何が3ヶ月?
頭の処理が追いつかなくて、俺は完全に固まってしまう。
「飲めないから、お前の分まで私が飲んでいるんだろう。」
「どんな理論よ!」
「夫婦は分かち合うものだ。当然だろう。」
「んもう!屁理屈ばっかり!」
夫婦・・・? 夫婦・・・夫婦?
「あ、ごめんなさいお見苦しいところを。でも正直本当にこの村に越してきて良かったと思ってるんですよ。温泉も自然もありますし、食べ物も美味しいですし、何より相談できそうな人も居ましたしね。」
子どもを育てるには本当に最適な場所ですねー、などとのたまうアンナの言葉に、俺は全てを理解した。

“「あら、そうでもないですよ。同じ様な立場の方が傍に居てくださると、何かと心強いですし。」”
“「ふふ、正直、安心しました。ますます長い付き合いになりそう・・・」”

つまりアンナは、仕事とは別に、「性別が違うとは言えモンスターのパートナーを持つ者同士、仲良くやっていきましょう」と言ってた訳だ。
いやでも・・・えええええええ!?

現実でも俺の口から絶叫が飛び出たのは、それから数秒後のことだった。


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