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赤虎アイルー

某所で書き溜めたSSの保管庫

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7-2:狩人の契り(中編)

また無闇に長くてごめんね。
続きはもう少し待っててね。




「紹介が遅れましたが、彼はコウライ。私の補佐です。」
アンナの紹介にあわせ、男性が軽く会釈をする。
「は、はぁ・・・どうも。」
俺も慌てて会釈をし返すが、コウライはさっさと座ってしまう。
アンナの方もさっさと席に着き、書類を広げ始めた。
「始める前に確認しますが、この略式審問会で述べた事は全て記録され、後に開かれる正式な審問会で証拠として扱われます。また、ここから王都まではかなりの距離ですので、ご本人の出席が難しくなった場合、その記録がそのまま陳述として扱われます。よろしいですね?」
「は、はい・・・。」
立て板に水の調子で述べられ、俺は反論することもできない。
「審問会に参加するのは審問官、補佐官、審問対象、そして証人が二人。合計で五人となります。・・・証人のお二方もよろしいですか?」
「大丈夫よ~。」
「・・・大丈夫だ。」
いつも通りのんびりとした調子で答えるギルドマスターのお姉さんと、いまいち状況がよく分かってないっぽいトトル。
何故かこの二人まで呼ばれ、今現在俺たち五人は集会所の一室を借りて、ひとつのテーブルに着いている。
「ではこれより、ハンターナンバー0086121、ユーライア・エリクソンのハンターズ・コード違反について、略式審問会を執り行います。」
机を挟んだ向かい側で、表情を崩さず淡々と述べるアンナの言葉に、俺は未だに現実感が湧かなかった。
だって、身に覚えが無いのだ。
自分が、ハンターズ・コードを破ったなんて。


ハンターズ・コードはいわばハンターの法律で、ハンター身分の定義に始まり、狩場での禁止事項まで事細かに網羅された規約だ。
これに違反すれば、一番重い罰としてハンターライセンスの剥奪も有り得る。


な、何もしてないよな俺!?
あぁでも何も無いなら審問官が来るはずもないし・・・!
「・・・すこしまだ混乱されているようですね。」
俺の動揺を見抜いたのか、アンナは順を追って説明してくれた。
「まず、あなたにかかっている嫌疑は、モンスターの捕獲と飼育についてです。」
「捕獲、は分かりますが、飼育・・・ですか?」
「はい。正式な手続きを踏まずにモンスターを捕獲、または飼育して所有することは禁じられています。それはご存知ですね?」
「は、はい・・・。」
モンスターを依頼以外で捕獲するのはもちろん違法だ。ハンターが捕獲するのは、綿密な実地調査によって生態系を崩さない範囲であると認められた時、または生態系を崩す恐れのある危険を回避する為と決まっている。
そして飼育の方も、ちゃんと申請して許可を得なければ行えない。
だがあんな馬鹿でかい生き物を飼うのは、好事家の貴族か研究目的の学術院くらいだ。
それだけの資金と施設を、俺みたいな一介のハンターが持てる筈が無い。
「あなたが以前、密猟者の賞金首を逮捕した時の状況を、覚えていますか?」
「それは、まぁ・・・しかし、それと何の関係が?」
「密猟者の大半の死因はボウガンの散弾によるものでした。しかし何人かは遺体の状況から、モンスターによる傷が原因と断定されました。」
それは、まぁ、実際トトルがやったんだしなぁ・・・。
しかしそのモンスターが今俺の横で空気読まずに北風みかんのジュース飲んでますと言えるはずも無く・・・って、おいまさかモンスターの飼育って・・・!?
「ですが、現場の周辺からは、大型モンスターが発見できませんでした。それらしき形跡や巣はあったのですが、モンスターの姿だけが忽然と消えたのです。」
アンナは俺を真っ直ぐ見据え、続ける。
「そこで我々は、その場に居た貴方がそのモンスターを捕獲、連れ去ったのではないか、と疑っているのです。」
今、自分がどれだけまずい立場にいるのか、やっと理解できた。
つまり、俺は間違いなくハンターズ・コードを破っているわけだ。
家にトトルを置いている事で。
「ですが、その当時この村の付近で大型モンスターを取引したという記録は見つかりませんでした。ですから、未だあなたがそのモンスターを所有しているのではないか・・・それが我々の推測です。」
まずい。今度こそ本気でまずい。
どうにか反論しようとあれこれ言葉を浮かべるが、上手く繋がらない。
中々口を開かない俺に業を煮やしたのか、アンナは黙秘権の説明まで始めた。
だがそれを横から止めて入った人物が居た。ギルドマスターのお姉さんだ。
「ユーリさんは~、確かに凄腕のハンターだけど~、いっつもお金に困ってるのよ~。だからモンスターを飼うなんて~、無理だと思うわ~。」
お姉さんナイスフォロー!
だがアンナは容赦なくそれを切り捨てる。
「では、金銭の為にモンスターを売り払う可能性もある、ということですね?」
「え? だって~、今売買の記録は無かったって~・・・」
「記録上は無くとも、非合法なルートで売り払った可能性はありえます。」
「そんな~・・・」
あぁそこで引っ込まないで!
「・・・ユーリは、そんなことしてない。」
と、ここで初めてトトルが口を開いた。
ありがたい! ありがたいけどお願いだから今は下手な事言わんでくれ!
「何か、確証があってそう仰るのですか?」
「俺が一緒に狩りに行って稼いでいる。だから今は金に困ってない。」
おぉ! 意外にマトモだ!
しかし、あちらは更なる隠し玉を持ってきた。
「・・・では、罪状が増えましたね。ハンターズ・コード第52条、モンスターを許可無く所有し、尚且つそれによって利益を得る事を禁ずる。」
「・・・っな!?」
「この薬に、見覚えがあるでしょう?」
そう言ってアンナが取り出した小瓶には、どこかで見たような粉が・・・まさかこれ・・・!?
「我々は『変異薬』と呼んでいます。一部のモンスターを人の姿へと変える薬品です。」
ネコバァの、秘薬!?
「あなたが賞金首を逮捕した直後に、同じギルド支部で新たなハンターが登録されたと知って、もしやとは思いましたが、どうやら予測は外れていなかったようですね。」
アンナはトトルを一瞥すると、再び俺に目線を戻す。
「では、詳しい話をお聞かせ願えますか?」

アイルーたちのこと。
彼らが持ってきた秘薬のこと。
そしてトトルを助けたこと。
全てを話し終えた時には、時刻は既に正午を回っていた。
聞いている間、青服の二人は特に驚いた様子も無かった。
意外だったのは、ギルドマスターのお姉さんも驚いていなかった事だ。
後日聞いてみたら、なんとなくトトルのことは気配で分かっていたらしい。
そのあたりは流石竜人族という所だろうか。
「なるほど。大体の事情はわかりました。」
アンナはコウライの取った記録を読み返し、俺に向き直る。
「ここからはオフレコですから、どうぞ気を楽にしてください。」
鋭い視線がいきなり和らぎ、笑顔となって、俺は面食らってしまう。
「詳しい理由は言えないのですが、恐らくユーリさんが罪に問われる事は無いと思います。」
「・・・へ?」
ますます面食らった。
もう、絶対ダメだと思っていたのに。
「特に倫理規定に反した部分はありませんし、何より」
アンナはトトルの方へ目をやり、はっきりと言った。
「トトルさんは、ユーリさんのことがとても好きみたいですから。」
「・・・っはぁ!? う、えぇ!?」
「その通りだ。」
「ちょ、何言ってんだトトル!」
「けど最近は『めいどふく』を着てくれないんだ・・・。」
「トトルーッ!!」
「あらあら。」
「・・・アンナ審問官。」
「ふふ、わかってるわコウライ補佐官。」
二人は立ち上がり、マントを着始める。
「あら~、お二人とももうお帰りなの~?」
「えぇ。一応審問会の名目は果たしましたし。・・・どうもありがとうございました。ギルドマスター。」
「せっかくだから今日は泊まっていかれたら?」
「そうしたいのは山々なんですが、急ぎの案件ですし、何よりうちの補佐官が真面目なもので・・・。」
コウライは相変らずの無表情のまま、むすっとしている。
「えー、ではこれで略式審問会は終了です。お疲れ様でした。正式な審問会の日取りなどは追って伝えますが・・・まぁ、正直開かれる可能性は」
「・・・グリーシア審問官。」
先程より幾部硬い調子で呼びかけるコウライの声に、アンナは肩を竦める。
「んもう・・・わかってるわ。それじゃユーリさん、トトルさん、また後日に。」
最初の雰囲気とは打って変わってフレンドリーに去っていくアンナの背中を、俺は呆然と眺めているしかできなかった。
い、一体何だったんだろう・・・?
というか、俺の中での「青服」のイメージが・・・。
「ま~・・・ユーリさんどんなに頼んでも着てくれないの~?」
「そうなんだ・・・。この間なんて集めたコインをぎるど何とかってのに・・・。」
「こらそこ妙な事話すな!」

だが、本当の波乱はまだまだこれからだった。


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